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身体は錬金術

最近ある武術家と話したんだけど、
身体って探求していくと錬金術なんですよねー、と。
動きを無限に微分していくと身体が別の領域に入っていき、
微分が精密であればあるほど、そのわずかな隙間にカミが降りてくる。
これは身体という具体性のなかにある聖性であり生成なんだという話。
一瞬一瞬、時々刻々と、世界が生成される、その渦中を生きることになる。
身体の探求していくとあまりにも面白く充実しているので、他の娯楽が必要なくなる。
鉛から黄金を作り出す錬金術のように、
身体は「死ねば腐る」即物性から霊性の問題まで次々に展開があり、
それがたまらなく面白いと。

私は「死ねば腐る」というのは魅力的なことのように思う。
実際にはそれを見るのは嫌だったり、臭かったりするのだけど、
認識の問題としては、そこにナニカある種の気高さのようなものを感じてしまう。

ユイスマンスだったか、腐っていく人間の体を延々と描写した作家がいたけど、
(違っていたら失礼)
私も似た経験をしたことがある。
看護師をしていた時、褥瘡で体の一部が腐っている患者さんがいて、
それは目にしみるほど臭かった。
その処置をしている時に、私は涙がでてしまった。
それは同情の涙ではなく、言葉ではうまく言えないが、
聖性に触れたときに、自然に流れ出てしまう涙だったように思う。
もっとも低いところにもっとも高いものが顔を出す。
身体はそういうものであると思う。

神は細部に宿り給う、という有名な言葉があり、
それは哲学者や詩人や宗教家の直感力・認識力がとらえた世界だけど、
身体を通すと、それが現実的具体的実践的なものになる。
西欧世界が言語的認識にとどめて来たものが(身体論にせよなんにせよ)、
具体的現実的なものになってくるのだ。

それなのに、それを知る人は少なく、
私はブログや口頭でうんざりするほどしゃべっているのに、
「ふーん」というような漠然とした反応しかなかった。
「ふーん」どころじゃないだろう、これはすごいことなんだよ、と私は内心思い続けてきた。
最上さんの考えていることなんか理解する人いませんよ、
もっとレベル下げないと社会性なんてもてませんよ、
とか言われ続けて、
確かに私にも問題はあろうけれど、どうしても譲れないものもある。
その葛藤はつらいものだった。
何が正しい道なのか、そんなに簡単にはわからないものだ人間には。

ところがここに来て、話の通じる人がポツポツと現れてきた。
それも大半は若い世代で、自分と同年代はいない。
芸術家よりも武術家とか元バイクのレーサーとか言語研究家とか、
そういう人達と話が通じるのが面白い。
それとごく普通の会社勤めの人もいて、その真摯さが私を励ます。
今はふつうのサラリーマンとかに、目をみはるような人がいるんだよ。
これこそ私が望んでいたものだ。
私は芸術家の中だけで生きていくのは嫌だった。

思えば私の若い頃には「身体」なんて口にする人もいなかった。
そういう概念じたいがなかったよ。
マルクスとかハイデガーとか言ってりゃ充分だったわけ。
「器官なき身体」とか、言葉だけで良かったんだ。
人はケッコンすれば一人前とか言われていた時代。
今ではふつうのサラリーマンが身体を求めて稽古に来る。

芸術というよりも「技芸」の世界の話だ。
私は芸術よりも技芸に近いことをしているという自覚がある。
技芸とは、人間が自然や世界と関わる時の、
基本的な構えや技術であり、個人の才能の開花とかいうものとはニュアンスが違う。
世界のなかに自分を定位すること、生きるための自己統御という永遠の課題。
虚無に呑み込まれないために、人は絶えず自己を定位し続ける必要がある。

私はよく「高度な内容を平易に語れるからすごい」と言われる。
そう言われるのは嬉しい。
どうしてそういうことが出来るのかと言うと、別に才能ではなく、
自分の体験や考えを、絶えず普遍の場所に持って行こうと、
それはそれは大変な努力をしてきたからだ。
自分さえすごくなればいいというような、ケチなところでは生きて来なかった。

すでに老人になった私に(ほうれい線もしわもいっぱいありますよ! )
ポツポツと共感者があらわれて来たことは、
あまりにも嬉しい有り難いことであるな。
私はすごい芸術家であるよりは、ひとつの場でありたいし、場に育てられたい。
私は身体の錬金術師であり、生きること死ぬことを舞として実現する者でありたい。
彼岸と此岸を自在に行き来する者でありたい。
他界の光をこの世に持ち出して来る者でありたい。
と私のロマンと修練は果てしなく続くのだね(^_^)

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ステージの違い

どの程度隔たりが有るのか、未だ見当も付きませんが
最上さんの語る言葉にはいつも共感を覚えます。
私などが口にするのもおこがましい気がして中々言えませんが。
いつも有り難うございます。
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Author: 最上 和子
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